かみ合わせが深い（過蓋咬合）の矯正治療
過蓋咬合とは？
過蓋咬合（かがいこうごう、英語ではディープバイト/Deep Bite）とは、上の歯が下の歯に深く覆いかぶさっている状態です。
健康なかみ合わせ（正常咬合）では、上の前歯は下の前歯を１/3~1/4覆うのが理想的です。しかし、過蓋咬合では、その覆いかぶさる度合いが非常に大きく、重度になると下の前歯が上の前歯や上顎の歯肉に完全に隠れて見えなくなってしまうこともあります。
その結果、下の前歯で上の舌側の歯茎をかんで痛みが出るといった症状で来院されることが多いです。
過蓋咬合の原因
過蓋咬合は、主に以下のような要因が組み合わさって起こります。
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上下のあごの骨のずれ
下顎が後方に引っ込んでいる（下顎の後退）または上顎が前に出ている（上顎の前突）など、上下のあごの骨の成長バランスの不調和。 -
歯の萌出（歯の生え方）異常
奥歯がうまくかみ合わず、前歯がかみ過ぎてしまう、または奥歯の高さが低い。
前歯が必要以上に長く伸びすぎている（過剰萌出）。 -
歯の早期脱落
乳歯が予定より早く抜けてしまい、奥歯が前に移動してしまい、結果的に前歯のかみ合わせが深くなる。
併せて起こる不正咬合
過蓋咬合は単独で発生するだけでなく、八重歯や下の前歯の凸凹など、他の不正咬合と併発することが非常に多いです。
また、特に上の歯がきれいに並んでいると一見問題が無いように見える場合も、かみ合わせが深いことにより、下記のような様々なリスクをはらんでいることが多いので注意が必要です。
健康上のリスクや普段の生活で困ること
過蓋咬合は見た目だけでなく、全身の健康や日々の生活に様々な悪影響を及ぼすリスクがあります。
健康に対するリスク
- 歯肉（歯ぐき）の損傷
- 重度の過蓋咬合では、下の前歯の先端が上の前歯の裏側の歯肉（歯茎）を突き上げ、傷つけたり、炎症を起こしたりすることがあります
- 歯の異常な摩耗
- 深くかみ込んでいることで、前歯の特定の部分に強い力がかかり、エナメル質が削れて**歯がすり減る（咬耗）**ことがあります。
- 顎関節への負担（顎関節症）
- 不自然なかみ合わせが続くと、下顎を動かすための顎の関節（顎関節）に過度な負担がかかり、顎の痛み、カクカクという音、口の開けにくさなどの顎関節症を引き起こす可能性があります。
- 歯周病のリスク増加
- かみ合わせの異常によって特定の歯に強い力がかかり続けると、その歯を支える骨が溶けやすくなり、歯周病を悪化させる一因となることがあります。
普段の生活で困ること
- 見た目（審美性）の低下
- 笑ったときなどに下の前歯が見えにくい、または上の歯ぐきが目立ちすぎる（ガミースマイル）など、口元の印象が悪くなることがあります。
- 咀嚼（そしゃく）機能の低下
- 食べ物をしっかりとかみ切ったり、すり潰したりする機能が十分に果たせない場合があります。
過蓋咬合の治療法
子供の治療（1期治療）
お子様の過蓋咬合は、一見綺麗に並んで見えることが多いため、気付かれないことも多いです。
しかし、学校健診で指摘されたり、お子様ご自身が「下の前歯で上の舌側の歯茎をかんで痛い」というようなことがきっかけで来院されることがあります。
治療の重要性
過蓋咬合の治療は非常に重要です。深いかみ合わせが下あごの成長や下の歯列弓の成長を妨げたり、顎関節に悪い影響を与える可能性があります。そのため、以下のような治療が行われます。
- 前歯の圧下：骨の中に歯を沈めることで、前歯のかみ合わせを浅くします。
- 臼歯の挺出：歯を伸ばすことで、前歯のかみ合わせを浅くします。
これにより、成人に向けて下あごが健康に成長する環境を整えます。
治療の流れ
顎の成長や歯の生え代わりは予測が難しいため、最終的な仕上げは2期治療（成長が終了し大人の歯がすべて生え揃った時期）に対応することがほとんどです。
成人の治療（2期治療を含む）
成人の過蓋咬合の治療は、他の不正咬合や歯茎の露出や上下のあごの骨のずれ等の骨格的不正がなどの複合的な要因があり治療を開始するケースがほとんどです。
特に合併しやすい不正咬合の代表的なものが八重歯などの前歯凸凹を伴う歯の叢生（歯の凸凹）であり、小臼歯を抜く抜歯治療になることも多いです。
また、効率よく歯を動かすために矯正用アンカー装置が使われることが多くなります。
治療期間は、前歯を骨の中に沈めるなどの時間がかかる治療や、患者様ご自身の咬合力により歯が動きにくいことが多いため、他の不正咬合の治療より長くかかることが多いです。
さらに、歯茎の見え方や上下顎のずれが大きい場合は、外科的矯正治療が必要になります。
日本矯正歯科学会認定医
矯正歯科専門医
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